2023年春のゲームマーケットで日本語版が先行販売された「モバイルマーケット」。
前々から同デザイナーの「スマートフォン株式会社」を遊びたいと思っていたのですが遊ぶ機会に恵まれず、夫婦2人で遊ぶにも4人以上で遊んだほうが面白いという話を聞いていたのでどうしようか…
と思っていたところ、数寄ゲームズさんの「比較レビューコンテスト」に触発されてクローズ会で遊ぶことになりました。こういうときに誘ってくれる友人は何にも変えがたいですね…
4人戦をそれぞれ1回ずつ遊ぶ会が2回開催されたので、計2回ずつ遊べました。
そして4回遊んだ私の着順は驚異の4位-3位-4位-4位。(初回の「モバイルマーケット」以外は最下位)
あまりにも勝てていないので、経済ゲーム下手なのかも。
「もしかして私このゲームに向いてなさすぎ…?」と思っていたのですが、遊んだ日の寝る頃になって「あのときこういう作戦とってればもっとお金稼げていたかも」と反省点が浮かんできてリベンジしたくなってくる。
その反省点さえ活かせば次こそは1位取れると思わせてくれるので、もしかして経済ゲーム苦手な人にも希望を持たせるすごい何かを持っているのでは。
まだまだ見えていない魅力はあるかもしれませんが、私なりに両者について感じたことを書き残しておこうと思います。
「スマートフォン株式会社」と「モバイルマーケット」
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テーマ
どちらもスマートフォンをテーマにしたゲームです。各プレイヤーは会社のCEOとしてスマートフォンの製造・販売を行い、スマホ市場の覇者となるべく火花を散らすことになります。
プレイヤーはお互いが競合他社として同じ市場の中で戦うことになる以上、インタラクションはバチバチ。どちらも「スマートフォンを作って売ってお金を一番稼いだ人の勝ち」というわかりやすいルールです。
デザイナー
どちらもデザイナーはIvan Lashin。
今回紹介するふたつのゲーム以外に「ファーナス -ロシア産業革命」のデザイナーでもあります。
ファーナスも対戦相手の動きや場の状況をよく見てプレイすることを要求されるので、今回の2ゲームを遊んだことでプレイヤー間のインラクションを意識したゲーム作りが上手なイメージが強まりました。
ゲーム性
パッドを使ったアクション選択
やはりスマートフォン株式会社といえばアクション選択のためのパッド。このシステムはモバイルマーケットにも引き継がれています。
商品をどれだけ作る?販路を広げる?いやいや技術開発を先にしないと・・・
という感じであちらを立てればこちらが立たず。ジレンマに悩む。会社経営って実はパズルなんですね…(たぶん違う)
このパッドの向きをこねくり回すときがゲームの醍醐味。
自分に何が必要か考えたり、相手の動きを予想したりしながらラウンドの動きを計画して、思い描く計画に最も近い形をタイルの組み合わせで表現するパズルゲームになるので、パッドでアクションを決めたときに「これで勝負だ!」と気合いが入ります。私はパズル完成の合言葉「ウボンゴ!」を毎回叫んでました。
そういう訳で、パッドの組み方がいちばんの悩みどころで時間がかかってしまうのですが、その考える時間は全プレイヤー同時ですし、決めた後は各々のパッドに沿ってアクションを進めるだけ。パッドの配置さえ決まれば流れるようにフェーズが進みます。
1ゲーム5ラウンドっていわゆる重量級ゲームの中ではよくある形式だと思いますが、実際にルールを把握してからは4人プレイでどちらも1時間程度で終わりました。
ただ、終わったときに「まだ1時間?」と感じたので時間に対する遊びごたえがすごいです。他の重量級ゲームでこの程よい頭の疲労感を得るにはおそらく2時間必要です。たぶん。
値段設定に応じた手番順決め
これも両者に共通していますが、基本的にスマートフォンの販売価格が安いプレイヤーから動けます。
(例外として、モバイルマーケットの販売促進フェイズは値段の高いプレイヤーから選択します)
カードやタイルなど早取り要素が多いゲームなので手番順はとても重要なゲームです。
では値段設定低くしておけばいいかというとそうではなく、薄利多売戦術だとゲームの勝利に必要な得点があまり入らないのです。うまくできてます。
ならばと高級スマホをバンバン売るのが効率的に利益出るはず!手番順は諦めて高級路線でいったるで!としたらしたで別の問題が発生します。
安いスマホから先に売り出されるので、市場にいたユーザーは手頃な値段で手に入るスマートフォンで満足してしまって、高級なスマホの入る余地がないなんてことが起こるんですね。
我がShooting star社(黒)は地元オーストラリアで高級スマホ路線の経営を試みるも
会社がないのに売りにくる4G企業や手頃な価格の競合他社に市場を乗っ取られてしまい在庫を抱えることに…ぐぬぬ
そんなときにひとりで高級路線突っ走ろうものなら…
他の企業が持っていない技術や機能を企業の売りにできるうちは、高い値段でも買ってくれる人を独り占めできたりするのですが、当然のように競合他社も開発してきます。そうすると徐々に新技術に目新しさは無くなっていき、製品の性能が似たり寄ったりになってくるとさらに各社の間で価格競争が加熱して…
現実のスマホ企業もこうして悩んでいるんでしょうか…
薄利多売にして市場を牛耳ってしまえるほどスマホを生産できないし、最高級にすると顧客が市場に残っていないし、というジレンマの中でプレイするバランス感覚が要求されます。
スマートフォン株式会社の特徴
基本情報
人数 | 1〜5人 |
時間 | 60〜90分 |
年齢 | 12歳以上 |
デザイナー | イワン・ラシン |
出版年 | 2018年 |
国 | ロシア |
ボード上のインタラクションがバチバチ!
まず、ボードゲーマーとしてはボードにコマ置いていくだけでもテンション上がるはず。(ですよね?)
そして「モバイルマーケット」にはない「スマートフォン株式会社」の大事な要素のひとつが、地域ごとのエリアマジョリティ。地域で最もスマホを売ることができた企業には点数の加算があります。
大きな国の市場を独占されると点数を荒稼ぎされてしまうので、それを許さないようにお互いが立ち回っていくと自然とバチバチに…。
バチバチのインタラクションは好き嫌いあると思いますが、もし苦手でも気心知れた仲間とああだこうだ言いながらできる機会があればぜひ試してほしいです!
ただしボード上でバチバチするときに忘れてはいけないのがカタンFAQにあるトイバーさんの格言。
『「また明日あなたと遊びたい」と言われるようなプレイで遊びましょう。』
最終局面になると点数を離されてしまい、トップ以外が協力しないと逆転できなくなるようなケースがあります。(実際に起こりました…)
私はついつい「協力してトップと戦うぞー!」と言ってしまっていて少し後悔。なので自戒の意味も込めて。
ちなみにそのときのトップは私のスマホ集中販売攻撃をものともせずに1位でフィニッシュ。
他の2人は私がトップと戦っている間にのびのび点数伸ばしてました。賢い。
パッドの拡張ができる!
自分の戦略に合わせた拡張タイルを手に入れることで、どのフェーズで強く出られるようにするか調整できるようになっています。
場の状況を見ながら、最適な経営戦略で勝負に出ている感じで楽しい!!
これ「モバイルマーケット」では最初にもらった2枚のタイルの組み合わせしかないので、パズルのパターンが少なくなるのがちょっと寂しいんですよね…
その代わりにカードがたくさん出てきますし、パネルの配置にも悩むんですけども!
新技術の研究
このゲームのプレイしていて大事だと思ったことのひとつが「自分にしか売れない場所を増やすこと」です。
それを可能にするのは値段設定だけではなく新技術の開発です。
メインボード下側にある6つの技術の組み合わせで自分の戦略を強化できるので、どの技術をどの順番で研究していくかで自社の特徴をつけていきます。
研究しやすい技術を複数個搭載できるようにするのか、難易度の高い技術を研究して強力な能力を得るのか、他と競合しない強みを見つけていたプレイヤーが得点を伸ばしていた印象があります。
ただ、あまり技術のパターンが多くない(6種の技術があり、裏表の2パターンずつ)ので、カードを使う「モバイルマーケット」に比べるとプレイヤー間の戦略が似てきてしまうこと、プレイ毎の戦略の取り方が固定化されてしまいそうなことが少し気になりました。
それでも2回遊んだくらいではまだまだ遊べそうな感覚はあるので、たまに遊ぶ分には裏表をランダムにするだけでも毎回新鮮な気持ちで遊べそうです。
また、取れる戦略が似てしまいやすいということは、裏を返せばあまり中重量級に慣れていない人でも遊びやすいということかもしれません。
モバイルマーケットの特徴
基本情報
人数 | 1〜4人 |
時間 | 60分 |
年齢 | 14歳以上 |
デザイナー | イワン・ラシン |
出版年 | 2021年 |
国 | ロシア |
カードによるランダム性の増加
モバイルマーケットはランダムでめくられるカードがいくつか用意されており、ランダム性が増加しています。
ラウンドの最初にめくられるカードによって市場が大きく変わることもあるので、毎ラウンド変わる状況に合わせた戦略を取ることを求められます。
例えば、画像のようなイベントが起こると市場から顧客が少なくなるので、そのラウンドで高級路線にすると市場に顧客が残っていないのでは…という悩みが生まれます。
また、「スマートフォン株式会社」では6種類しか出てこない技術も、技術・機能・販売施策の3種類のカードとして生まれ変わり、ラウンド毎にランダムにめくられるようになっています。
カードは全て早取りなので、プレイヤー間で同じ能力を持つことはなくなり、各プレイヤーの能力を差別化しやすいようになっています。
ちなみにこのカードやタイルを自分の場に並べていって自分を強化していくメカニクスのことを「タブロービルド」というそうです。最近知りました(笑)
カードのコンボがいいほど後半にかけて点数の伸びが良くなっていく、楽しいやつですね。
プレイヤー同士のバッティング
対戦相手の動向だけではなく「手番順のためにこのラウンドは薄利多売」「欲しい技術カードが出ていない、むしろ確保したい販売施策カードがあるから高級路線」といった場の状況に合わせて価格設定をしていく必要があります。そのため、「スマートフォン株式会社」よりも戦略的に価格を上下させることが増え、それによって価格設定のバッティングを気にする場面が多くなっているように感じました。
そういうこともあり、初回プレイのとき「モバイルマーケット」って結局は戦略うんぬんはあまり関係なく、バッティングゲームなのでは?(やや悲観的)と感じながらプレイしていました。
価格設定が全体的に安価に向かう中でひとりだけ価格を上げてしまった結果、市場にほとんど顧客が残らず、せっかく生産した商品が売れ残ってしまい、点数獲得のチャンスを逃してしまったことでそう感じてしまってました。
ただ、2回目になると「顧客をお得意様として抱え込んでおけばバッティングしてしまって市場の顧客が少なくなっても利益出せるぞ!」という気づきだったり、「相手が技術カードや機能カードを欲しそうか、どんなカードを持っているかで価格設定をなんとなく読めてくるな」という成長だったりがあったことで、バッティングを肯定的に見れるようになりました。
読み合いを制して自分のやりたいことを通せたときは快感です。
製造原価を考える必要あり!?
「モバイルマーケット」ではスマートフォンを製造するのにコストがかかるようになっています。
ベースとして常に1$かかるだけではなく、機能を搭載するほど原価が大きくなっていくので、多くの顧客が満足するスマホを製造するには利益を減らさないといけないということ…!
ただ、原価を低減させることのできるカードがいくつかあるので、うまく組み合わせると恐ろしい利益率のスマホが誕生したりします。そのコンボを見つけられるかどうかもこのゲームの楽しいところ。
「スマートフォン株式会社」にはなかった要素ですが、これによってルールが複雑になるかというとそこまでではなく、フレーバーを強めたかったのかな?と感じました。ただ、これによってポンポン機能つけることができないので、ちょうどいいルールだと思います。
感想
どちらも遊んだ感覚としては、土台が似てこそいますが全体的なプレイ感は違うゲームでした。
スマートフォン株式会社 | 自分の考えた経営戦略を試す楽しさと常に周りのプレイヤーを感じるので”みんなでボードゲームを遊んでる!”という感じが強くていい。 ルールは比較的シンプルなので中重量級に慣れていない人でも遊びやすいはず。 ただ、インタラクションは強めなので、ゲームの遊び方が似ている人とプレイしたほうが楽しく遊べそう。 |
モバイルマーケット | ラウンド毎に状況が変わるので価格設定の上下が多くなり、お互いの行動の読み合いが熱い。 カードが出てくるたびに効果を把握する必要があるので、スマートフォン株式会社に比べると情報量が多く、ややボドゲ慣れした人向きな印象。 タブロービルドで興奮できる人はゲーマーだと思うので(偏見)そこもゲーマー向けに感じる要因のひとつ。 |
そして共通して強く感じたのは、一緒に遊んでいるプレイヤーの動向に大きく影響を受けるというところ。
そのため、プレイ人数は多い方が悩ましい場面が増えて楽しいのではないかと感じました。どちらもできれば最大プレイヤー人数で遊ぶべきゲームだと思います。
ちなみに…どっちが好き?
いぺの場合
見事にボロ負けしていますが、どちらも楽しいゲーム。
どちらかというと「モバイルマーケット」派。
どちらかというと「モバイルマーケット」の方が好み。まあ結果として負けてますが、ただ他の人より利益出てなかっただけで、会社経営は順調だったんです!(笑)
個人的には毎ラウンド出てくるカードに合わせて作戦を練るところに楽しさを感じました。
急に顧客がいなくなったり、いい感じの技術カード、販売施策カードが出てきたりするたびに悩む悩む。やはりランダムに出てくるイベントをどう乗り切ってやろうか考えるの楽しい。
あ、この記事を書いていて自分の弱点(?)に気づいたのですが、「スマートフォン株式会社」は良くも悪くも視覚的に強そうな企業が見えてくるので「あそこにだけいい思いさせてたまるかー!」ってあちこちに宣戦布告したくなるんですよね…
そのせいで自分の得点につながらずに終わっていたような気がします。
その点、「モバイルマーケット」はお得意様をうまく囲い込んでおけば、カードで独自強化した自分の経営方針を通す保険ができるので「よそはよそ、うちはうち」という感覚でプレイできたのがよかったのかな。
とはいえ、相手の価格設定によって市場の顧客は取り合いになるので、みんなで遊んでいる感覚もありますし、プレイヤー間の干渉度合いがちょうど良く感じたのが高評価の理由です。
えりの場合
「スマートフォン株式会社」のほうが好き!
プレイの方針が立てやすいし、やっぱりボードに駒を置いて遊ぶほうがテンションが上がるね。
わかる!!!
ボード上でお互いに干渉し合うようなゲームでしか得られない栄養がある気がします。
えりさんの場合は特にワーカープレイスメント大好きっ子なのでそれも大きいかもしれないですね。
私と一緒に遊んでいたえりさんですが、2回ずつ遊んで「スマートフォン株式会社」の成績は初回は1位、2回目は2位と好成績だったのでそれも高評価の理由にありそうです。
ただ、「モバイルマーケット」でも初回こそ4位でしたが、2回目では1位。強い。
せっかくなのでプレイングのとき考えていたことを聞いてみました。
「スマートフォン株式会社」のときは4Gの技術が強力だったから、それを中心にプレイしてたら調子良かった気がする。
「モバイルマーケット」で1位を取ったときは、カードで原価を抑えて高額スマホを売る作戦に専念していたのが勝因だと思う。点数がもらえる販売施策カードも噛み合わせが良かったかな。
ふむふむ。自分の信じた戦略をまっすぐに突き進むのが勝利の鍵かもしれません。
思い返すと、お得意様には普通のスマホをハイエンドスマホとして販売する販売施策カード駆使して高額なスマホ売りつけてました。
お得意様に売るスマホが機能全搭載扱いになるって不思議な効果ですよね…プレイした人全員の目を止めているカードなのでは?笑
あとがき
どちらも楽しいゲームなんですが、エリアマジョリティとかバッティングとかがメインなので人数が集まらないと本領発揮できないのが玉に瑕。
夫婦ふたりプレイがメインなので「ゲームはめちゃくちゃ面白いんだけど…人数集まるかなぁ…」と購入をためらうことが何回もあるんですよね…
と思っていましたが、「スマートフォン株式会社」には2〜3人のマップの拡張があるらしい…!
BGG見るとなかなか高評価。
拡張も日本語化していただくためにも、どうやら「スマートフォン株式会社」「モバイルマーケット」を布教しにいかなければならないようです。
まずはこの記事完成が布教の第一歩ということで!なにとぞ!
購入情報
おわり
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