マッチオブザセンチュリー (Match of the Century)

ボードゲーム

ゲームマーケット2023秋の数寄ゲームズさんの目玉商品のひとつである「マッチオブザセンチュリー」ですが、販売に先駆けてサンプルを遊ばせていただけたので紹介させていただきます!

この記事は数寄ゲームズさんの依頼のもと作成したPR記事です。

どんなゲーム?

「カエサル!」などのデザイナーであるパオロ・モリと、「ウォーターゲート」を手掛けたチームがタッグを組んで作った2人用ゲームです。

人数2人
時間30〜45分
年齢10歳以上
デザイナーPaolo Mori
出版年2023年
ドイツ
テーマ

ソ連のチェス王者スパスキーとアメリカの天才フィッシャーの世界選手権の1試合をテーマにしたボードゲームです。ソ連の選手が連勝を続けていたこと、冷戦中の米ソがバチバチしている中で行われたことが重なって大注目を浴びた一戦になったため「マッチ・オブ・ザ・センチュリー(世紀の試合)」と呼ばれており、タイトルの由来にもなっています。

試合出場を渋るフィッシャーに出てもらおうと政府関係者が本人に電話で激励をするエピソードがあるくらいには、政治的にも商業的にも注目されていたようです。

ルールブックとは別に歴史的背景をまとめた24ページの冊子がついているので、それを読むとその辺りの背景をバッチリ理解できます。
(面白い内容だったのですが、横道にそれそうなので記事の最後で触れます)

チェスが全面に押し出されたゲームではありますが、チェスの知識はなくて全く問題なし。もしわかっていてもフレーバーを理解しやすくなる程度だと思います。

ルール概要

お互いに固定の16枚のカードからできたデックを使用します。
カードの内容はチェスと同じ配分(キング・クイーン1枚、ナイト・ルーク・ビショップ2枚、ポーン8枚)となってますが、1枚の上下に白と黒の駒があったり、少しずつ違う効果を持っているのが特徴的ですね。使い方は後述。

お互いに任意の枚数を引いて手札とします。手札上限を超えなければ引く枚数は自分で決められます。

カードサイズが大きいのでカードスタンド2枚使いです。あると遊びやすいです。

その手札で最大4回の数比べ(エクスチェンジ)を1ゲームとして、その結果、勝利 or 引き分けだと勝ち点を1点獲得します。ゲームを繰り返して先に6点取った方がマッチの勝者(全体としての勝者)というのがルールの大枠です。

実際にスパスキーフィッシャーが戦った世界選手権では、チェスの試合を21試合行った末に過半数の12.5点を超えたフィッシャーの勝利となりました。
何戦か戦って全体としての勝者を決めるのはそのイメージですね。

特徴的なポイント

エクスチェンジ

チェス用語としてのエクスチェンジは駒を取って取られてのことを指すようですが、ここでは互いにカードを出し合って行う数比べと理解すれば十分だと思います。

白のクイーン駒を持っているプレイヤーは白を、もう一方のプレイヤーは黒を上にしてカードをエクスチェンジ区画にプレイします。
(プレイする順番はゲームの最初は白駒から、それ以降は前回のエクスチェンジの勝者から)

より大きい数字を出したプレイヤーが区画に応じた優勢を獲得します。
有効な1手を打った方が試合の勝利に近づくイメージですね。

3のビショップに勝つために4のルークで対抗!
IIIの区画で勝利した黒のフィッシャーが優勢3を獲得します。

また、手元のポーンを使うと最大2まで数字を増やすこともできます。

デックに1枚しかない最強のクイーンにポーンを2個つけて勝ちにいきます。

負けたプレイヤーは駒の絵の下(ポーンの場合は左)に書かれた効果を実行できます
後述する気力の増加など、今後の戦いを有利に進められる効果があるため、負けにも大きな価値が生まれることもあります。

負かされてしまったら気力(頭+稲妻のアイコン)を回復できるので、負けも無駄になりません。

なので、あえて同じ数字を出して引き分けて、勝たせもしないし負けさせもしないという中間択がいい味出すんです。
引き分けにされると「あぁそうくる?」って言っちゃう。

いぺ
いぺ

ちなみにこのゲームに触れて初めて知ったのですが、チェスって引き分けに持ち込むのも有効な戦術だそうで。
そこまで意識してデザインしてるんかな…?すごくない…?

そんなこんなでエクスチェンジが4回プレイされるか、残りの優勢から逆算して勝利が確定したときに結果判定。勝者に1ポイントが与えられます。

ポイントの状況はキング駒で管理します。中央まで進められればマッチ勝利です。

気力

ゲームに勝利するために重要になってくるのがこの「気力」というパラメータ。

気力が高いほど、ラウンド開始時に補充される手札とポーンの数が増えます。手番の選択肢が増えることになるので、けっこう大事。
また、最大近くまで上げると次のゲームの優勢まで得られます。

ただ、逆もまた然りなので、気力が低いと選択肢がめちゃくちゃ少なくなります
エクスチェンジ4の区画で負けたり、デックのリシャッフルが発生すると1下がるほか、カードの効果で下がってしまうこともあるので、管理を怠るとあっという間に気力なくなります。

フィッシャーは初期位置から気力が1下がると手札上限が2枚減ります。これはまずい。

なので目の前の勝ち点獲得も見据えながらも、気力も気にしつつ戦わないといけない。面白いじゃないの。

じゃあそんな大事なパラメータをどこで上げるかというとカードの効果に頼るしかないんですね。
つまり「気力を養うためにあえてちょうどいい負けを演出する」のも作戦のひとつになります。

あえて早めに負けを認めて次の勝負の準備をするのも作戦。

投了

カードを出せない(出したくない)場合、カードを出す代わりに投了することになります。そうすると1ゲームの勝利を相手に譲ることとなり、相手に勝ち点1ポイントが入ります。

このルールを見て、負けてもカードの効果発動するんだから、どうせ負けるならカード出したほうがいいんじゃないの?

…と思ったのですが、気力が下がるエクスチェンジ4の区画の負け回避だったり、次のゲームで使えそうなカードの温存だったりと意外と投了したいタイミングが出てきます。
早いタイミングの投了は相手の計画を崩せる可能性もあるので、投了のタイミングも作戦のひとつですね。

夫婦2人で遊んでみた感想

いぺの場合

いぺ
いぺ

カードの引き運や相手の狙いとの噛み合いはあるものの、けっこう実力でカバーできるようになっています。

カードを理解してくると景色が違って見えてくるので、リプレイ性もしっかり感じられます!

個人的に感じたこのゲームの楽しさを3点に絞って挙げてみました。

心理戦と展開の読み合いが熱い

お互いに使うカードは固定ではありますが、最初のうちは情報がないので手の内の探り合いになります。

それが徐々に相手の捨て札が増えていくことで「相手のクイーン駒使い終わってるし、楽に勝利取りに行くぞー」という考え方も出てきます。

ただ、相手がそれを察知して早々に投了しちゃう可能性もあるんです。
もしくはここは勝ちたいんだろ…?と言わんばかりの顔で強力な効果を持ったカードで負けようとしてきたり…
いやらしいゲームです(褒め言葉)

相手の動きを牽制しつつ、自分の勝利条件達成を目指すための1手1手が悩ましく、直近の勝利も大局的な勝利も見ないといけない。
まさに「カエサル!」や「ウォーターゲート」に通ずるものをこのゲームでも感じました。

テーマの完成度が高い

このゲームを語る上で外せないのがテーマとの親和性だと思います。

チェステーマなのに、チェスのルールは知らなくても遊べる。でもこのスパスキー vs フィッシャーの対戦を追体験できるようなボードゲームに落とし込んでいます。
…いや、両立できるのすごい。

背景を知ってから遊ぶと、スパスキーよりもフィッシャーの方が気力が下がったときの弱体化が著しいところなんかにも細かなこだわりが見えて面白いです。

最初のゲームはスパスキーが白駒を使って先手となることや、同時に勝利条件を満たした場合はスパスキーの勝利となるルールが存在するのですが、それらも史実通り。細かい。

アブストラクト感あり

引いたカードを出す場所を自分で決めて強さ比べをする点で見ると、少し「バトルライン」を感じさせるのですが、固定デッキを使っていることでこちらの方がアブストラクト味があります。

カードを出して数比べを繰り返すだけですが、自分と相手の状況を見るとけっこう情報が見えているんですよね。
そこから最適な一手を考えるの好きな人って、どちらかというとアブストラクト好きな気がする。

ただ、そういう有利を取れる場合はしっかり勝ちを積み重ねて、負けるとしてもただでは負けない…!
という地道な数比べを繰り返す流れは良くも悪くも渋いと感じる人はいるだろうなあ、とふと思いました。

とはいえ、リプレイするたびに上手くプレイできるようになれる面もあるので、切磋琢磨できる環境があれば楽しいゲームであることは間違いないと思います。

えりの場合

えり
えり

2人用ゲームでそこまで長くないけど頭を使って戦えた感覚があるのがよかった!
ただ、直感的に動けないので難しかったな。

面白さは理解しつつも、直感派のえりさんには作戦の立て方が難しいと感じたようです。

そういえば、えりさんにとって「ウォーターゲート」はお気に入りのゲームのひとつなので楽しそうにプレイしていますが、「マッチオブザセンチュリー」は難しそうな顔してプレイしていたような気がします。

個人的にはどちらも近しいプレイ感な気がするんですが、何が違うんでしょう。

えり
えり

「ウォーターゲート」は証拠トークンの心理戦が常にあるのが楽しい。

「マッチオブザセンチュリー」は”あえて負ける”を選択肢に入れるのが難しいなと思ったかな。
もう少しその感覚が身につけば、もっと楽しくやれそうな気がする!

とのことでした。
もしかすると「ウォーターゲート」ではあえて負ける、というよりもどこかに特化して攻める感覚になることで遊びやすさを感じているかも。

大局的なことを考えてあえて負ける、って個人的にはヒリヒリして楽しいんですが、けっこうゲーマー思考でないと難しいですよね…

ちょこちょこ出して切磋琢磨しよう
…まあ、偉そうなこと言っておいて執筆時点では私が全敗してますけどね。精進します。

パートナーと遊べるか悩まれる方の参考になれば幸いです。

購入情報

ゲームマーケット2023秋で数寄ゲームズさんのブース(両日ニ10)にて先行販売です!
しかも!ゲムマでは特殊サイズスリーブ付属版を購入できるとのことなので、スリーブ派の方には朗報です。

ちなみに「マッチオブザセンチュリー」は「ウォーターゲート」と同じカードサイズですが、マイナーなカードサイズのため現在は国産のスリーブで対応できません。

有名な海外メーカーMayday、Sleeve Kings、Swan Panasiaには対応するサイズ(Mega Civilization (75x105mm))があるようですが、国内のショップで取り扱っているところはあるのかな…?
もし購入するとなると輸入になる可能性は高そうです。

後日通販でも購入できるとアナウンスがあるとはいえ、送料とかスリーブ代とか別途かかってきてしまうはず。ゲムマに行かれる方は「マッチオブザセンチュリー」をお得に買えるタイミングをお見逃しなく。

あとがき:歴史的背景…?

テーマの背景を説明するのに1冊使ってるボードゲームを初めて見ました。読まなくてもプレイに支障はないものなんですが、ルールブックより厚いです。気合い入ってます。そんなボードゲームありか。

ちなみに内容としてはざっくり以下の通り。もし海外版で手に入れていたとしたら100%読めませんでしたね…

・フィッシャーの生い立ち、チェスとの出会い
・フィッシャーとスパスキーの初戦…からのスパスキーの生い立ち
・チェス界の問題児フィッシャー
・ごたついて開催できない王者スパスキー vs 挑戦者フィッシャー
・念願の「世紀の試合」

参考文献は14種類も挙がっており、「背景の説明にこの情報いる…?」というレベルの情報まで記載されてます。
読むことでカードに描かれたフレーバーテキストやゲームシステムの理解が深まるのはもちろんのこと、ボードゲームのコンポーネントを全て味わい尽くせる日本語化のありがたさ、これを訳しきった永峯さんへの尊敬の念を感じることができます!すごい!

「こういう天才って惹かれる何かがあるよな」とフィッシャー推しになるか、「厳しい環境で戦うスパスキーさんを応援したい」とスパスキー推しになるのか…あなたはどちらでしょうか。
購入された際はぜひ読んでみてください。

ちなみに私の感想は「ちょっと同情するけどフィッシャーさん気難しいっすね…」「垣間見えるソ連の対応が怖い」です。私はスパスキー推しになりました。

映画『完全なるチェックメイト』公式サイト PAWN SACRIFICE|TOP
完全なるチェックメイト / PAWN SACRIFICE|公式サイトトップ

ちなみに「活字はきつい!でも背景知りたい!」という方には映画『完全なるチェックメイト』を観るのもありかも。
ほぼフィッシャー視点の内容なので、この冊子よりはフィッシャーの境遇に寄り添って見れるような気がします。

いぺ(歴史的背景を読んで予習済み)、えり(予備知識ゼロ)で観ましたが、ドキュメンタリーのような感覚で2人とも楽しんで観れました。
冊子から得た知識で映画のストーリー補足できたときはドヤ顔でしたねぇ

長くなってしまった割に、ゲームを購入するかどうかの判断に関係するかわからなかったのであとがきにしました…

おわり

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